コーヒー豆は、コーヒーノキという植物の種子を焙煎したものです。
植物としてのコーヒーノキは、アカネ目アカネ科コーヒーノキ属に分類されており、コーヒーノキ属には約70種あると言われています。その中でも飲用に利用されているのは、アラビカ種、カネフォラ種、リベリカ種の3種で、これらは「コーヒーの3原種」と呼ばれています。また、これらを掛け合わせたハイブリッド種というのもあります。

普段、レギュラーコーヒーとして飲まれているのは、ほとんどがアラビカ種で、コーヒー全体の生産量の60~70%を占めています。次いでカネフォラ種が30~40%、リベリカ種は1~2%に過ぎません。
それでは各種について詳しく見ていきましょう。

アラビカ種(Coffea arabica)

良質な酸味を持ち風味に優れています。風味に優れる反面、栽培条件が限られており、病害虫に弱く、収穫量も少ないという特徴があります。ティピカ、ブルボン、ゲイシャなど、多くの品種があります。
アラビカ種は、もともとエチオピアに自生していました。伝搬ルートは2つあるとされ、1720年頃マルティニーク島に伝わったものをルーツとするもの、もう1つは1717年頃レユニオン島(当時はブルボン島)に導入された木をルーツとするものです。
当店で取り扱っているコーヒー豆は、全てこちらのアラビカ種です。

アラビカ種の主要品種

ティピカ(Typica) エチオピアからマルティニーク島に伝わった品種。アラビカ種の中でも最も原種に近いとされています。形は先端が細く尖っており、さび病に弱く生産性は低いという特徴があります。
ブルボン(Bourbon) ティピカの突然変異種で、レユニオン島に移植された木を起源とする、ティピカと並んで原種に近い古い品種。ティピカに比べて粒が小さく丸いのが特徴。生産性はティピカよりも若干高い。
ゲイシャ(Geisha) 1931年にエチオピアで発見され、1960年代に中米に持ち出されました。多くの品種がティピカを祖としているのに対し、ティピカとは異なる起源を持った品種です。2004年にパナマ・エスメラルダ農園のゲイシャが史上最高値で落札され、一躍注目を浴びることとなりました。
マラゴジッペ(Maragogipe) ブラジルで発見されたティピカの突然変異種。アラビカ種最大の大きさで、コーヒー豆だけでなく樹高も高く、葉も大きいという特徴があります。
カトゥーラ(Caturra) ブラジルで発見されたブルボンの突然変異種。豆は小粒だが生育が早く、収穫量も多い上に、樹高が低く生産性が高い。グアテマラ、コスタリカなど、中南米で多く栽培されています。
ムンド・ノーボ(Mundo Novo) スマトラ(スマトラ島で栽培されるティピカの亜種)とブルボンの交雑種。病害虫に強いが、生育はやや遅い。ブラジルの主力品種のひとつ。
カトゥアイ(Catuai) ムンド・ノーボとカトゥーラの交雑種。病害虫に強く、栽培地域の標高が低くても生育が可能。
パカマラ(Pacamara) パカス(エルサルバドルで発見されたブルボンの突然変異種)とマラゴジッペ(ブラジルで発見されたブルボンの突然変異種)の交雑種。豆は大粒で、1本の木からの収穫量は少ない。

カネフォラ種(Coffea canephora)

中部アフリカのコンゴが原産と言われています。19世紀、ヴィクトリア湖の西で発見されました。アラビカ種が病気の大流行で大打撃を受けた際、病気に強いカネフォラ種が評価され、急速に導入が進みました。
ロブスタ、コニロンなどの栽培品種がありますが、市場に出回っているのはほとんどがロブスタ種です。このロブスタ種は、病害虫に強く、低地での栽培が可能で、収穫量も多いというメリットがある反面、風味でアラビカ種に及ばず、ストレートで飲まれることはほとんどありません。酸味がほとんどなく、強い苦味があり、「ロブ臭」と呼ばれる麦茶にも似た独特の香りがあります。缶コーヒーやインスタントコーヒーなどの工業用、または、苦味を強調したいときのブレンド豆として使用されています。

リベリカ種(Coffea liberica)

原産国であるリベリアをはじめ、西アフリカで栽培されています。病気に弱く、味もアラビカ種に及ばないため、市場にはあまり出回っていません。ほとんどは国内消費用、研究用に栽培されています。

ハイブリッド種

通常、植物におけるハイブリッド種とは異なる品種を掛け合わせた交雑種を指しますが、コーヒーの場合はアラビカ種とその他の種の交雑種(種間交雑)を指します。
風味に優れるが病害虫に弱いアラビカ種と、風味は劣るが丈夫なカネフォラ種を掛け合わせ、丈夫で風味にも優れる品種を作ろうという試みなどです。当初は耐病性を重視して作られていましたが、近年では味も重視されてきています。品種としては、カティモール(Catimor)、コロンビア(Colombia)、イカトゥ(Icatu)、ルイル・イレブン(Ruiru 11)などがあります。


コーヒーにはたくさんの品種があり、それぞれ個性的な風味・特性を持っています。コーヒーの味には地理的要因や気候条件なども大きく影響するため、品種だけで味を語ることはできませんが、品種に着目して飲んでみるのも面白いですよ。
当店のコーヒー豆も、商品ページに品種を明記していますので、普段飲んでいるコーヒーの品種を確認してみてはいかがでしょうか。